過去10年のサポレジ赤↓の空売り戦略 ─ 損切りと利確は何%が最適か

サポレジ転換の赤↓で空売りしたら、損切りと利確は何%が最適か。日本株全銘柄・過去10年・約29万回の結果を、10万円あたりの平均損益で解説します。

チャートの「サポレジ転換」インジケーターに出る赤い↓矢印は、「ここから上値が重くなる」ように見えるため、空売りの合図に使えないかと考える方は多いと思います。この記事では、赤↓が出たあとに空売りした場合、損切りと利確を何%に置くのが一番いいかを、日本株全銘柄の過去10年・約29万回の結果で調べました。

結論(先に3行で)

  1. 損切りは浅ければ浅いほど良い。 10万円分を空売りしたとき、損切りを10%にすると1回あたり平均で約1,100円の損、1%にすると約160円の損でした。
  2. 出口は欲張らない。 利確は3%近辺が最良で、10%、15%と大きく狙うほど悪くなりました。
  3. ただし、赤↓だけでは平均でプラスにならない。 どんな出口にしても平均は損でした。出口の工夫で損を小さくすることはできても、利益にはなりません。

1. 「平均損益」の見方

この記事の数字は、**「10万円分を空売りして、同じ取引を何度も繰り返したとき、1回あたり平均でいくら増減するか」**です。勝率ではなく、平均で見ます。

たとえば、4回に1回しか勝てなくても、勝つときは大きく、負けるときは小さければ、平均はプラスになります。逆に、10回中7回勝てても、負ける1回が大きければ平均はマイナスです。そのため、損切りと利確の幅は、勝率ではなく平均損益で比べます。

2. 検証のやり方

  • 対象: 日本株の全3,709銘柄、過去10年分の日足。
  • シグナル: サポートを終値で2日連続して割り込み、抵抗線に変わったときの赤↓(約29万回)。
  • 売るタイミング: 赤↓が確定した翌営業日の始値で空売り。
  • 出口: 株価が利確ラインまで下がれば利益確定、損切りラインまで上がれば損切り。同じ日に両方に届いたときは、損切りとして数えました。60営業日たっても決着しなければ、その日の終値で決済としています。
  • 比較: 同じ期間に、赤↓と関係なく5営業日おきに空売りした場合(ランダム空売り)。

3. 結果① 損切りは浅いほど良い

利確を4%に固定して、損切りの幅だけ変えました。

<title>損切りが浅いほど、1回あたりの平均損失は小さい</title> -20円 0.5% -160円 1% -260円 1.5% -350円 2% -490円 3% -620円 4% -730円 5% -820円 6% -990円 8% -1,110円 10% 上の数字=損切り幅(売値から何%上がったら買い戻すか)。棒=10万円あたり1回の平均損益

損切りを広げるほど、損が一直線に増えました。赤↓のあとに株価が反転して上がったとき、損切りが遠いと、含み損をそのまま大きく抱えてしまうからです。利確の幅を変えても、この傾向は変わりませんでした。

4. 結果② 利確は3%近辺、欲張るほど悪化

今度は損切りを1%に固定して、利確の幅だけ変えました。

<title>利確は3%付近が最良で、欲張るほど悪化する</title> -220円 1% -180円 1.5% -160円 2% -150円 3% -160円 4% -170円 5% -180円 6% -210円 8% -220円 10% -240円 15% 上の数字=利確幅。棒=10万円あたり1回の平均損益(損切りは1%に固定)

利確を1%まで小さくすると、取れる利益が減って少し悪くなります。逆に大きくしすぎると、利確に届く前に反転して損切りになる回数が増えるため、やはり悪くなります。一番損が小さいのは3%付近でした。

損切りと利確を組み合わせた結果の一部です(10万円あたり1回の平均損益)。

損切り\利確 3% 6% 10%
1% -150円 -180円 -220円
2% -320円 -420円 -490円
5% -630円 -880円 -1,020円
10% -960円 -1,340円 -1,520円

左上(損切りが浅く、利確が小さい)ほど、損が小さくなっています。

5. 結果③ 持ち続けるほど損が増える

出口を決めずに、赤↓のあとに空売りして一定の日数がたってから買い戻した場合の平均損益です。

持った日数 1日 5日 10日 20日 60日
赤↓で空売り 0円 -300円 -550円 -1,040円 -2,620円
ランダム空売り +10円 -150円 -400円 -840円 -2,250円

持てば持つほど損が増えました。過去10年の日本株は全体として上昇していたため、空売りは長く持つほど不利でした。損切りは浅く、利確は早く、という結論とも合っています。

6. 赤↓の空売りは、適当に売るより良いのか

損切り2%・利確4%の出口で、売るタイミングによる違いを比べました。

売るタイミング 1回あたりの平均損益(10万円あたり)
サポート割れの赤↓ -350円
新しい抵抗線ができた赤↓(確定日に売り) -290円
赤↓と関係なく適当な日に売る -260円

赤↓で売っても、適当な日に売っても、ほぼ同じでした。赤↓には「売れば平均で儲かる」という力はありませんでした。

年別に見ても、平均がプラスだったのは10年のうち2018年だけです(それでも10万円あたり+140円)。この年は相場全体が下げた年で、適当な日に売っても平均はプラスでした。

7. イオンのチャートで見る「全勝に見える」落とし穴

赤↓が3回出て、そのたびに大きく下がっているチャートを見ると、「赤↓で売れば全勝だ」と感じるかもしれません。ここには落とし穴があります。

赤↓のうち、新しい抵抗線ができたときの矢印は、高値をつけた足に表示されますが、実際に画面に出るのは10営業日後です。つまり矢印を見て売れるのは、すでに10日ぶん下がったあとです。

イオン(8267)の3回の赤↓を、「矢印が画面に出た日の翌日に売った」として数えてみます(利確8%・損切り5%)。

矢印の足 売れる日までにすでに下がった幅 結果
7月7日 7.1% 損切り(一度戻されて-5%)
7月29日 3.0% 利確(+8%)
9月4日 6.8% 決着前(約6%の含み益)

「矢印のついた足」で売れたなら全勝ですが、実際に売れる日では勝ち1・負け1・決着前1でした。矢印がついた足で売った想定の検証は、結果がよく見えすぎます。この記事の検証は、すべて「矢印が確定した日の翌日」に売る想定です。

8. 損が小さい赤↓と、避けたい赤↓

勝てる赤↓は見つかりませんでしたが、同じ赤↓でも、損が小さいものと大きいものの差はありました。10万円分を空売りしたときの、1回あたりの平均損益です(損切り2%・利確4%)。

<title>条件別・10万円あたり1回の平均損益。どの条件でもマイナス</title> 値動きが荒い株 -170円 52週高値から大きく下がった株 -170円 矢印が出るまでに8%超下がっていた -200円 (参考)赤↓全体の平均 -330円 高値からほとんど下がっていない -390円 52週高値のすぐ近く -480円 値動きが小さい株 -500円 10万円分を空売りしたときの、1回あたりの平均損益(短いほど損が小さい)
  • 損が小さかったのは、もともと値動きが荒い株、52週高値から大きく下がっている株、矢印が出るまでにすでに8%以上下がっていた株でした。
  • 損が大きかったのは、値動きが小さい株、52週高値のすぐ近くにある株、高値からほとんど下がっていない株でした。

値動きの小さい株は、利確ラインまで下がる前に戻されやすく、損が大きくなるとみられます。ただし、適当な日に空売りした場合も同じ並びになるので、これは赤↓の効果ではなく、株の性質の違いです。マシな側でも、平均はマイナスのままです。

9. 赤↓の見方と、チャートでの使い方

赤↓には2種類あり、どちらも同じ赤い↓で表示されます。

  • 新しい抵抗線ができたとき: 直近の高値が、前後10日間で一番高かったと確定したときに出ます。矢印は、その高値の足(10日前)に付きます。
  • サポートが割れたとき: 以前は抵抗線だった水準がサポートになっていて、終値で2日連続して割り込んだときに出ます。

チャートの設定で「サポレジ転換」を有効にすると、赤い抵抗線と青いサポート線、矢印が表示されます。赤↓は空売りの合図というより、「この水準が上値の壁になっている」「サポートが割れた」と確認する材料にとどめ、損切りや利確のラインを決める目安に使うのが現実的です。

10. 検証の限界と注意点

  • 平均はどの出口でもマイナス: 最適な出口を選んでも、赤↓の空売りで平均的に利益が出るという結果ではありません。
  • コスト未反映: 貸株料、逆日歩、売買手数料、売値と買値の差は含まれていません。実際は、ここで示した数字よりさらに悪くなります。
  • 損切り0.5%・1%は現実的でない: 1日の値動きの範囲に収まる幅なので、ノイズですぐ損切りになり、検証どおりの価格で売買できないことがあります。数字が良いのは「ほとんど取引しない」のに近いからです。
  • 現在上場中の銘柄のみ: 上場廃止になった銘柄は含まれていません。また、過去10年の日本株は上昇基調で、空売りに不利な環境でした。
  • 空売りできない銘柄: 制度信用で売れない銘柄や、空売り規制がかかる局面があります。
  • たくさんの組み合わせから選んでいる: 上位同士の小さな差に意味はありません。「損切りは浅め」「利確は小さめ」という傾向だけを読み取ってください。

本記事は情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。

まとめ

  • 赤↓のあとに空売りするなら、損切りは浅く、利確は3%近辺が、一番損が小さかった。
  • ただし、赤↓で売っても、適当に売っても平均は変わらず、どの出口でも平均はマイナス。
  • 画面に出る矢印は実際より10日前の足に付いているので、「全勝に見える」チャートに注意。
  • 赤↓は売りの合図ではなく、上値の壁やサポート割れを確認する材料として使う。

チャートの基本的な見方はチャートの読み方もあわせてご覧ください。